2011年5月15日

「経済学 名著と現代」

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「経済学 名著と現代」 日本経済新聞社編

評価:4.2


経済社会の進化は、実は、「最先端の知恵」と「歴史の知恵」の両輪相まってこそ支えられているのではないだろうか

まさにその通りだと思う
本書はそうした「温故知新」つまりふるきを
たずねあたらしきをしる、ための本だ

経済学 名著と現代経済学 名著と現代
日本経済新聞社

日本経済新聞出版社 2007-12
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目次


1, 文明論の視点
1章 福沢諭吉 「文明論之概略」
2章 F.ブローデル 「地中海」
3章 J. R. ヒックス 「経済学史の理論」
4章 J. K. ガルブレイス 「ゆたかな社会」


2. 思想の広がり
5章 F. ハイエク 「自由の条件」
6章 A. トクヴィル 「アメリカのデモクラシー」
7章 M. ウェーバー 「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」
8章 D. ヒューム 「人性論」
9章 T. R. マルサス 「人口論」
10章 J. S. ミル 「自由論」


3. 経済理論の発展
11章 アダム・スミス 「国富論」
12章 A. マーシャル 「経済学原理」
13章 J. M. ケインズ 「雇用・利子および貨幣の一般理論」
14章 J. A. シュンペーター 「経済発展の理論」
15章 ブキャナン、タロック 「公共選択の理論」
16章 ゲイリー・ベッカー 「人的資本」


4. 経営学への発展
17章 ピーター・ドラッカー 「断絶の時代」
18章 H. サイモン 「経営行動」



多くの人、いや経済学を学んできた人でも昔の偉人が書いた著作というのを直接読む機会はあまりないのではないだろうか

たとえば経済学部の人だとしてもアダム・スミスの「諸国民の富」を知ってはいたとしても実際によんだことがない人が大半だと思う

アダム・スミスのその本は多くの本では「神の見えざる手」だと一言でまとめられているが、(実はその言葉は本文中に一回しか出てきていないらしい)もっと深いところまで実はきちんと考察されていたのだということがこの「経済学 名著と現代」を読むことでわかってくる


本書を読むとアダム・スミスに限らず昔の知の巨人というのは、手垢の付いた多くの本で語られているような薄っぺらいものでなく、もっと人間の本質に迫る議論をしていたのだということを改めて認識させられる


もちろん古典というのを必ず読めということではないだろう

実際僕自身もここに掲載された多くの本は読んでいなかった
国語が大嫌いだったせいもあるのか、昔の本というのはなかなか解釈するのに時間がかかるためもうちょっと読みやすい本に逃げてしまうというのが本音だ

しかし本書を介してやはり過去の偉人の本というのは何か別の本を介して理解した気になるというのはあまりにももったいないということを実感した


また本書は多くの学者の方々がそれぞれの1章を担当しているため、とても内容が密だ

おそらく自分が本当に推薦したい一冊を書いているのだろう
それゆえ、とても魅力が伝わってくる

個人的には松井教授の書いたD.ヒュームの「人性論」や林教授がおすすめしたA.マーシャルの「経済学原理」などはとりわけ興味深かった

その他にもドラッカーの項などは最近流行なので逆に読む気がしてなかったのだけれど、読んでみたい!というような気にさせてくれる


自分の関心分野や専門によってインスピレーションを受ける箇所は違うかもしれないが、是非この本を入り口にして昔の人がどれだけのことを考えていたのかを体験してみるのもとてもおもしろい作業だと思う

そしてその歴史の延長線上にいる僕たちにも多くのインスピレーションを与えてくれるのだと思う


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