2010年12月31日

「ツイッターノミクス」

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「ツイッターノミクス」 タラ・ハント

ツイッターに限らずSNSなどWeb2.0に代表されるウェブサービスが世界をどのように変え、ぼくたちはどう変わるべきなのか

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タラ・ハント 津田 大介(解説) 村井 章子

文藝春秋 2010-03-11
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目次


第1章 ウッフィーって何?
それは、ウェブの世界では「お金」よりはるかに価値のある「通貨」である。それは与えることによって増えていく。貢献することによってたまっていく


第2章 Twitterはテレビ広告よりもときには効く
かつて、物を買わせようとするならば、テレビなどの大メディアの広告を使うしかなかった。SNSの登場は消費者の購買活動に劇的な変化を起こした


第3章 デルは、商品に対する不満も公開した
パソコン市場トップのシェアに達したデルは、驕っていた。カスタマーサービスはおざなり。ブロガーの言うことは無視。しかし株価の急落で目覚める


第4章 ウェブ上で顧客を増やす八つの秘訣
「荒らし」にはどう対応したらいいか。アイデア募集に賞金をつけるべきか。Facebook、WindowsVista、レストラン検索サイトなど具体例から学ぶ


第5章 ただ一人の顧客を想定する
旧来のマーケティング手法、グループセグメントはウェブではうまく働かない。ただ一人の顧客を思い描いて、商品を設計し語りかける。するとうまくいく


第6章 ウェブ2.0、各種メディアをいかに使いこなすか
ブログ、ポッドキャスト、Twitter、wiki、ソーシャル・ブックマーク、フォーラム、SNSなどウェブ2.0に花開いた各種のメディアの特性と利用法


第7章 ウォルマートの失敗に学ぶ
それでは、PRのプロを雇いブログを書かせ、桜を使ってフォーラムを立ち上げるというのは?αブロガーに金を払うというのはどうだろう?


第8章 アップルはなぜ人をわくわくさせるのか
持っているだけでわくわくするそんな体験を創造することこそウッフィーを高める。モレスキンの手帳、ボージュ・オー・ショコラなどそこには体験がある


第9章 無秩序をあえて歓迎する
ウェブ上では、がちがちに計画を立てるより、むしろ予想できないことを取り入れるようにするとうまくいく。私自身が関わった市交通局のフォーラムから


第10章 社会貢献そのものを事業目的にする
ウェブ上の企業では、目先の利益を追うとコモディティ化の罠が待つ。そうではなく、社会貢献それ自体を事業の目的にして成功したクレイグズリストなど


第11章 ツイッターノミクスのルール
まとめてみよう。ウェブ2.0の様々なツールの発達で、全く違う市場経済が出現した。個人も組織も、その新しい世界に対応したものが成功するのだ


解説  日本のツイッターノミクス


原書のタイトルは"The Whuffie Factor"となっており、「ウッフィー」というのが一貫して本書のキーワードだ

この本を一言で要約すれば、
「貨幣」というものが基準となるマーケット・キャピタルから、「ウッフィー」が基準となるソーシャル・キャピタルにシフトしつつある
ということになるだろうか


それでは「ウッフィー」とはなんなのだろうか
それは「評判」というソーシャル・キャピタルの経済における新しい通貨だ

Web2.0と叫ばれて久しいが、Web2.0では一方通行だったやりとりが相互的になりインターネットが「ソーシャル」な場となった


そこでは、どれだけお金をもっているかは関係なく、どれだけ「評判」を集めているか、が重要となる
というのが著者の主張だ

実際Gigazine:YouTubeだけで年収約2600万円を稼ぎ出したユーザーなど、YouTubeで儲けた一般人トップ10にもあるように個人が「評判」の力だけで生計をたてられつつある(まぁこれは極端な例だが)

そこで本書はそうした点をうまくつかんだデルの例などを交え説明したり、ウェブ2.0に代表されるブログやSNS、Twitterなどの紹介とその活用法などが紹介されている

著者自身、米ではかなり有名なアルファブロガーらしく、いかにウッフィーを集めるかなどが載っていてなかなかおもしろい

それでもコミュニティ・マーケティングをずっと実戦してきた経験から、ウッフィー・リッチになるための私なりの原則として、次の5つを挙げておきたい。

1 大声でわめくのはやめ、まず聞くことから始める
2 コミュニティの一員になり、顧客と信頼関係を築く
3 わくわくするような体験を創造し、注目を集める
4 無秩序もよしとし、計画や管理にこだわらない
5 高い目標を見つける

これはおそらく企業向けに書かれたものだが1や2などはひたすらフォローしまくってフォロー返しを期待している自称コンサルタントと言われる人たちに聞かせてやりたいものだ


とはいえ、著者の意見にはある程度賛成できる

企業レベルでというより、個人レベルではウッフィーという評判による力というのは認識せざるを得ない

もし、個人としてやっていくとなるとコンテンツの充実しかないのかな、とは思うが

また、津田氏の解説もなかなか興味深く、今年、ツイッターに代表されるウェブサービスがかなり流行したことを考えると2010年を象徴する本なのかな、とも思う


ただ、サービスやメディアが増加するということは、同時にわれわれが他のことに費やす時間が減る、ということだ

企業にとっては当然そうしたサービスを積極的に活かしていくことは必要だが、個人にとって果たして本当に必要なのか、と聞かれたら

ツイッターがなかった頃に比べたら便利になったのは確かだ
しかしそれによってすべての人の生産性が上がったのか、という点に関してはぼくは疑問が残る


メディアというのは付き合い方次第だ

ツイッターが流行してウェブのそうしたすごさを認識すると共に、僕にとってはその点を深く考えさせられた1年間だった


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