2010年8月19日

「電子書籍の衝撃」

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「電子書籍の衝撃」 佐々木俊尚

評価:4.2





こちらは「Kindle解体新書」と違って、電子書籍がいかに人々の生活を変えていくか、そして出版を変えていくかという点について書かれた本

副題は「本はいかに崩壊し、いかに復活するか?」となっていてまさに「電子書籍の衝撃」というタイトルにふさわしい中身になっている

目次
1章 iPadとキンドルは、何を変えるのか?
2章 電子ブック・プラットフォーム戦争
3章 セルフパブリッシングの時代へ
4章 日本の出版文化はなぜダメになったのか
終章 本の未来


よく知られているように日本ではまだメジャーになっていないがアメリカでは爆発的に売れている電子ブックリーダー

ここで電子書籍が紙の本に変わるための4つの条件を示している

第一に、電子ブックを読むのに適したデバイスが普及してくること。
第二に、本を購入し、読むための最適化されたプラットフォームが出現してくること。
第三に、有名作家か無名のアマチュアかという属性がはぎ取られ、本がフラット化していくこと。
第四に、電子ブックと読者が素晴らしい出会いの機会をもたらす新しいマッチングモデルが構築されてくること。
そのもとで、こうした電子ブックリーダーとそのプラットフォームがいかにこれらのピースを揃え始めているかを書かれていて、電子書籍ってそんなすごいのかなぐらいの気持ちで読み始めたが、正直革命がまさにもうすぐ起ころうとしているというような衝撃を受けた


まずプロの作家もアマの作家も電子書籍では完全にフラットに扱われるという点

これはひと足早く変革を遂げた音楽業界ではもうすでに起こり始めている現象らしい
ここではまつきあゆむさんという「自宅録音家」が取り上げられていた

ましてやここ最近の「ケータイ小説」もその一つだろう
著者はケータイ小説に関しても本を書いたことがあるらしく、著者の紹介によってケータイ小説の見方も変わった

それはケータイ小説が目指しているところは純文学とは全く違い「共感」であるということらしい

そうしたある特定の需要のための究極がフラットな書籍だと書いている


また電子書籍と必ずセットで出てくる「出版文化」という点についても著者は優れた編集者も少数いると断りつつ痛切に批判している

多くの編集者はどこかで見たことのあるようなビジネス本や自己啓発本の量産を、まるで機械工場の労働者のように繰り返しています。
こういう現状のどこに、「文化」がるのでしょうか?
そうであれば、私たちが考えなければならないのは、グーグルブック検索やキンドルのような新しい電子ブックの世界が、どういう利益不利益を読者や書き手にもたらすのかをきちんと捉えることであって、感情的な反発など一切不要です。

これはまさにその通りだと思う
最近の平積みされている似たような本の多さに辟易している方も多いのではないかと思う

では電子書籍がこうした現状を打開するかというと必ずしも打開するかはわからない
むしろ本を選択する幅が少なくなり、ベストセラーばかりが売れるような状態になる可能性すらある

しかし本書でも述べられているように本というのは本来少数で多様的なある種のオタクさがあるのが健全な世界だ

電子書籍により「時間」というボーダーさえ取り払われ全てがフラットになることは少なくともそうしたことを望む読者にとっては選択肢が増えるだろう

そうした意味で電子書籍に期待する意味もあるのではないかと思う

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