2011年1月6日

「ウェブはバカと暇人のもの」

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「ウェブはバカと暇人のもの」 中川淳一郎


誰もがうすうす気づいていて、誰も言い出さなかった点を指摘した本

ウェブはバカと暇人のもの (光文社新書)ウェブはバカと暇人のもの (光文社新書)
中川淳一郎

光文社 2009-04-17
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2ちゃんねる、ニコニコ動画などをみていると、誰がこんなことをやるのかと思うときが多々ある
この本は多くの人が抱いていたであろう「違和感」を代弁している

目次


はじめに バカを無視する「ネット万能論」


第1章 ネットのヘビーユーザーは、やっぱり「暇人」
品行方正で怒りっぽいネット住民 ネット界のセレブ「オナホ王子」 「怒りの代理人」がウヨウヨ、要はいじめたいだけ 読解力がなく、ジョークも通じない人々 「被害者がいるなら、ここに連れてこい」 クレームという名の粗探し 「誰が言うか」はかなり重要 ネットでたたかれやすい10項目 暇人にとって最高の遊びがインターネット 1億2000万パケットを自慢する暇人 ブログ、SNSの内容は「一般人のどうでもいい日常」 さんまやSMAPは、たぶんブログをやらない 暇人はせっせと情報をアップし、リア充はその情報の換金化に励む


第2章 現場で学んだ「ネットユーザーとのつきあい方」
もしもナンシー関がブログをやっていたら... 「堂本剛にお詫びしてください」 芸能人を中傷して18人が摘発!? ネットはもっとも発言に自由度のない場所 「ネットで消費者の声を聞け」は大ウソ 「Web2.0」とかいうものをあきらめた瞬間 「オーマイニュース」惨敗の裏側 結局、B級ネタがクリックされる 素人に価値のある文章は書けない ネットの声に頼るとロクなことにならない


第3章  ネットで流行るのは結局「テレビネタ」
テレビの時代は本当に終わったのか? ブログでもテレビネタは大人気 王道は「テレビで見た→ネットで検索&書きこみ」 コピペできない雑誌・新聞はネットにさほど影響なし バナナ、ココア、納豆、寒天...結局、テレビがブームを作る 芸能人の「テレビ人格」を疑わない素直な人々 「ネットでブーム!」なんてこんなもの スターはテレビからしか生まれない ネットはさほどテレビを敵視していない これからも人々は大河ドラマと紅白歌合戦をみつづけ、「のど自慢」に出演する


第4章  企業はネットに期待しすぎるな
企業がネットでうまくやるための5箇条 ブロガーイベントに参加する人はロイヤルカスタマーか!? ブログに書く理由は「ただだから」 ネットに向いている商品は、納豆、チロルチョコ、ガリガリ君 「Web2.0」とかいう前に、「Web1.374」くらいを身につけるべき ばかの意見は無視してOK クリックされなきゃ意味がない 先にバカをした企業がライバルに勝利する ネットプロモーションのお手本「足クサ川柳」 ネットでブランディングはできない


第5章 ネットはあなたの人生を何も変えない


まず本書はこんな書き出しから始まる

私はニュースサイトの編集者をやっている関係で、ネット付けの日々を送っているが、とにかくネットが気持ち悪い。そこで他人を「死ね」「ゴミ」「クズ」と罵倒しまくる人も気持ち悪いし、「通報しますた」と揚げ足取りばかりする人も気持ち悪いし、アイドルの他愛もないブログが「絶賛キャーキャーコメント」で埋まるのも気持ち悪いし、ミクシィの「今日のランチはカルボラーナ」みたいなどうでもいい書き込みも気持ち悪い。うんざりだ。

たしかに、上で挙げたものはネットの一側面ではあるが、とても共感できる。

ぼくのまわりではあまりいないけど、2ちゃんねるに書き込むような人ってどんな人なんだろうといつも思うし、他人の書いたどうでもいい書き込みを熱心に見る人も一体なにを求めてそんなことをやってるのか一切理解できない

鱸漁blog.com:Twitterに飽きる人の思考を経済学的に考えてみるでも書いたが、要はそうしたことに費やせる相対的な時間的コストがとても小さい「暇人」か、そもそもそんなことを考えずに楽しいからやる「バカ」しかそんなことはやらないだろう、というのが著者の主張だ


また、Web2.0についても言及している

「オープンソースでプログラムを作る」などといった「頭のいい人」の世界では、Web2.0の概念が非常にしっくりきて、すばらしいプログラムの誕生へ役立つことだろう。だが、相手が暇つぶしの道具としてインターネットを使っている「普通の人」か「バカ」の場合、双方向性は運営当事者にとっては無駄である。

著者は長いことネット上でおそらく執筆してきたので、このことを当事者側として身をもって経験した故の結論だろう

実際ブログを書いている人でもある程度PVが増えてコメントも増えてきた場合、コメント欄を無視するか、削除する場合が多いことも同じ理由だろう


そうした中でネットの中で健全に生きていくためにはそうした意見を「無視する」ことだ
ある程度の図太さが必要なのだ
こうした態度をとった吉本興業をこう評価している

常にネットの声におびえ、ネットの悪意ある声でさえも「貴重なお客様のご意見」とする趨勢のなか、「バカの意見は無視してOK」「自分が正しいと思う信念があるのであれば、それを貫くことが大事」という前例を作っただけに、画期的な出来事だったといえよう。

またブログについても言及している
そもそもぼくがブログを始めた動機は
・大学院試験の情報が少なすぎるから来年以降受ける人のため
・メモにずっと書いてきた本の感想をもっと検索しやすくするため
だが、ブログを書くという行為は正直時間がかかることは否めない

このブログは趣味の一環だが、ブログのアフィリエイトで生計をたてようなどと考える人はいないだろう
その点でもやはりウェブはバカと暇人のもの、というのはあながち間違えではない(要はぼくは世間一般で見て暇人だ)

この他にもマーケティングなどにも言及しているが、本書の重要なメッセージは
「ネットとの関わりの仕方をもっと考えるべきだ」
という点だろう

ネットがなかった時代に比べ、ぼくらは賢くなれると同時にバカにもなれる

ネット上よりもリアルの方が重要、とは言わないが一度そうした点を考えてみる必要はあるだろう

今後スマートフォンの拡大と共に、更にウェブに触れる機会が増えるだろう

どのように情報を「増やすか」ではなく、どのように「捨てるか」がますます重要になってくる中で本書を読む価値はあると思う


追記
日本のネットはある意味世界的に見ればかなり独特だろう
アメリカ人であるタラ・ハントが書いた「ツイッターノミクス」と読み比べてみる(本書は否定的、「ツイッターノミクス」は肯定的)となかなかおもしろい

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