ウィキペディアがもたらした効用というよりは、あえてウィキペディアがもたらした功罪を検証した本
ウィキペディア革命―そこで何が起きているのか? ピエール アスリーヌ フロランス オクリ ベアトリス ロマン=アマ デルフィーヌ スーラ ピエール グルデン Pierre Assouline 岩波書店 2008-07 売り上げランキング : 387864 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
目次
序 情報ソースに何が起きているのか
第1章 動揺する教育現場
社会では
第2章 判定の判断ーネイチャー誌調査の真実
争点の少ない調査項目 信義に関わる文章の張り合わせ ネイチャー誌が確認しなかった間違い 誇張される調査
第3章 ウィキペディアの裏側
書き込みのコントロール 管理者の役割 数字への執着 数百万のウィキペディアン 曖昧なウィキペディア
第4章 間違い、改ざん、虚偽
信頼の限界 反エリート主義のプロジェクト よく知られるでっち上げと間違い 我も我も 光より速く
第5章 百科事典の興亡
第6章 ディドロはウィキペディアの先駆者?
歴史を振り返って 構成の問題 すべてが政治的に、イデオロギー的に ミッシェル・セールー孤立する「ウィキ熱狂者」 情熱の問題
第7章 ウィキペディアの賢い利用法
二つの利用タイプ 投稿による成績評価 固定したウィキペディア
解説 ウィキペディアと日本社会
ー集合知、あるいは新自由主義の文化的論理
タイトルからウィキペディアのもたらしたことについて書いてあるのかと思いきや、あえて批判的な意見を6人の著者が私見を交え語っている
とりわけ問題となっているのは、教育での使用と間違いを潜在的にはらむ危険性だろう
この点について著者は学生のコピーなどの問題もあるが、むしろ学生はウィキペディアに書いてあることは容易に信じてしまうことが危険だ、と述べている
とりわけ中立的な文章が難しい人文系の項目に関しては情報が操作される危惧をもっている
たしかに、ぼくもウィキペディアに書いてあることはかなり信頼を置いているためもし間違った情報や意図的に都合よく書かれた文章が載っていると相当危ないことはたしかだ
実際たとえば企業(IBMやSONYなんでもいい)について調べるときですら、企業の公式ホームページよりウィキペディアの項をまず参照する人が多いのではないだろうか
それほど深く根付いているが故に問題である、と著者は指摘している
またネイチャー誌が調査した結果(ウィキペディアはブリタニカと同等の情報の信頼性がある)についても信憑性が危うい、として批判している
最近ではウィキペディアとは直接関係ないがウィキのシステムを利用したウィキリークスについても議論はあるだろう
とはいえ、これほどまでに拡大した現象に対して批判がない方がおかしいわけで、問題があることが即価値がないということにはならない
ぼくとしては、そうした批判されている点を考慮したとしてもウィキペディアがもたらした便益は大きいと思う
実際ネイチャー誌がウィキペディアの信頼性はブリタニカほどない、と結論づけたとしても利用しているだろう
ただし、ウィキペディアのようなオープンソースの限界があることもたしかだが
そして皮肉にも著者たちより木村忠正教授の解説の方が的を射ているような気がした
ウィキペディアの「革命」はおそらく止めることはできないだろう
そうしたウィキペディアリスクを認識しつつ、どのように活用するかを考えることが本当は大事なのだと思う
Related Posts:
・「電子書籍の衝撃」
・「これから論文を書く若者のために」
・Googleを120%活用する
0 件のコメント:
コメントを投稿