2011年6月25日

「『ファインマン物理学を』を読む(力学と熱力学を中心として)」

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「『ファインマン物理学を』を読む(力学と熱力学を中心として)」 竹内薫

高校までに習った微分積分を使わない意味不明な物理学を捨てて
もっとおもしろい物理学を

「ファインマン物理学」を読む 力学と熱力学を中心として「ファインマン物理学」を読む 力学と熱力学を中心として
竹内 薫

講談社 2005-04-28
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目次

第1章 時間+空間+力=力学
第2章 熱力学の存在意義
第3章 ファインマンの知恵袋――ミセレーニア


「ファインマン物理学」といえば多くの物理学を学ぶ学生が入門として読む教科書であるが、本書はそれを一般向けに解説した本だ


といってももちろん「教科書」を解説するわけだから数式が出てくる(というより数式があったほうが分かりやすいわけだが)がかなりかみ砕いて書いてあるので別に理系でなくても物理がどういったものかというのはよくわかる

理系であれば、力学・熱力学・電磁気学というのは1年の一般教養課程で学ぶわけだが、本書はそういったもう知ってることだけでなく、著者が書いているコラムなどを通して現在の最先端ではどんな研究がなされているのか(例えば超ひも理論であったり、力の統一理論)をひたすら分かりやすく書いてあるので、理系で物理を専攻していない読者もとてもおもしろく読める
(例えば量子テレポーションの話では量子を夫婦の不倫の喩えに置き換えて難しい概念をなんとなくわかる形で書かれている)


僕自身、高校の頃にかなり物理学を勉強して一時期は物理学を志していた時期があるため、内容は難しくはなかったが、それ以上にファインマン先生の「具体的な物理」というのが新鮮だった


例えば本書にはファインマン物理学の練習問題を少し載せてあるが

ハレー彗星は1456年に見えて、人々を大いに恐怖させた。彼らは教会に行って、神よ、悪魔から救い給え、トルコ族から救い給え、彗星から救い給え、と祈った。
1986年にはそれ以来7度目に太陽の周りを回ってやってくるはずである。

そのときのハレー彗星の軌道を計算せよ、というのが問題である

さすがに解き方は忘れていたが、ケプラーの法則を使って周期76年の楕円軌道が描く長半径では32AU(天文単位)になる、ということが導かれる

こんなようにとても身近な物理の問題を考えていることがファインマン物理学の真骨頂なのだろう


さらに著者の竹内薫さんは科学史を専攻していたこともあって物理学の歴史であったり人物史なども挟まっていることがさらに読みやすく、楽しくしているんだと思う


直接本書とは関係ないが、現在平行して読んでいた「ケプラー予想」とも関連していて、
おもしろかった


物理学というのはものすごいきれいな体系なので初学者を魅了するが、一度専門的な話になると(おそらく)ものすごく難しくなる

なので外野はちょっと外側から覗いてみてその学問の魅力を感じることができればとりあえずは十分だ

本書はそんなちょっとした覗き見には最適だ

自分の勉強してる分野に物理を応用しようなんて高尚なことを考えずに、ちょっと息抜きに、ちょっとした箸休めに、本書を読んでみてはいかかでしょうか


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