2011年6月2日

「天才の時間」

このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク
「天才の時間」 竹内薫

評価:4.6

僕たちと天才とは何が違う、いや違ったのか

天才の時間天才の時間
竹内 薫

エヌティティ出版 2008-07-30
売り上げランキング : 356756

Amazonで詳しく見る by G-Tools




目次


第1章 アイザック・ニュートン 生涯の研究を成し遂げた二〇カ月の創造的休暇
第2章 アルベルト・アインシュタイン 二〇世紀の世界観を変えた最も才能ある人の不遇
第3章 スティーヴン・ホーキング 天から与えられた休暇で開花した宇宙論
第4章 チャールズ・ダーウィン 進化論のアイデアを温め続けた生涯休暇人
第5章 シュリニヴァーサ・ラマヌジャン 数学しか勉強しない、数学だけに没頭する頭脳
第6章 グレゴリー・ペレルマン 問題を解くエクスタシーに生きる数学者
第7章 マウリッツ・エッシャー 版画の中に豊穣な幾何学世界を閉じ込める才能
第8章 イマニュエル・カント 現代科学がわかってた?二〇〇年前の考える人
第9章 ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン 『論考』から『探究』への飛躍を生んだ回り道
第10章 カール・グスタフ・ユング 深層心理の旅で確立した無意識の世界
第11章 宮澤賢治 『銀河鉄道の夜』に秘められた科学の美
第12章 鈴木光司 恐怖の感情を自在に操る卓越した才能
第13章 北野武 「世界のキタノ」を生みだした長い下積み


まず序文でこう言っている
しかし、本書は、そういった天才本とは一線を画する。なぜなら、僕は人間のほとんどは生まれつき、さほど才能に差なんてないと信じているからだ。

もともと僕も人間の才能というのは遺伝子で決まるわけではなく、その人が育ってきた環境によって決まると思っているんですが、それじゃあ何が僕らふつうの人と天才とを分けたの?、という素朴な疑問を時間という切り口で考えてみた本


本書はニュートン、アインシュタイン、ホーキング、ダーウィン、ラマヌジャン、ペレルマン、エッシャー、カント、ヴィトゲンシュタイン、ユング、宮沢賢治、鈴木光司、北野武といった幅広い分野の「天才」と呼ばれる人々をとりあげている

ふつう、天才というのは生まれたときから普通の人とは違う、と思いがちだが本書では違う
つまり、「天才の時間」があったからということ

ここで「天才の時間」ときいて、いわゆる最近の書店で出回っているような時間の使い方がうまかったんだなぁとは考えないでください

それは天から与えられた「休暇」のこと

例えば、ニュートンを例に取り上げるとニュートンは力学の体系と微分・積分の概念を生み出した人ですが、そのほとんどをいわゆる「驚異の年」とよばれる1665年に生み出されています

知ってる人も多いようにその年はヨーロッパ中でペストが流行しニュートンは閉鎖された大学を離れ故郷で一人きりに籠もってその20ヶ月の間にこのプリンピキアのほとんどを考え出したとされています

本書で注目しているのはこの20ヶ月という「休暇」がニュートンの才能を開花させたという意味でこの時間を「天才の時間」と呼びその観点からいろいろな天才を見ています

天才といえば、寝る間も惜しんでがんばる人たちや、逆に、さしたる苦労もなくぱっとひらめいてしまう人たちだろうが、あまり休暇を取っているとは思えない。アインシュタインが休暇中に相対性理論を編み出したわけでもなかろう。
そう思われるかもしれないが、ここでいう「休暇」は、そんじょそこらの休暇とはわけがちがう。
人生のある局面において、幸か不幸か、一つの仕事に集中せざるを得ないような状況が「天」から与えられ、気がついたら大ブレーク...という筋書きが実に多いのである。
それが「天才の時間」なのであり、極上のワインが樽の中で熟成するような期間なのである

極上のワインが樽の中で熟成...
僕はすごいこの言葉が気に入ったんですが、そうした熟成期間を経て画期的な仕事がなされた、という視点はすごい腑に落ちるし何よりなんとなく勇気づけられる気がします


本書の内容も去ることながら、著者の竹内薫さんのちょっとお茶目な書き口も僕は好きなんでおすすめです
(実際僕はコマ大数学も第1回目のフィボナッチ数列の時から見てましたが、その時はそれほどお茶目さは感じなかったですが、意外と本ではおもしろかった)


天才を取り扱った作品は本・映画多くありますが、基本的には天才系はやっぱりおもしろいと感じます
(例えばグッドウィル・ハンティングなんてもうすごい好きなんですが)

本書は比較的読みやすく書かれているのであまり本を読まない人にもおすすめです

ぜひ読んでみて、極上のワインか安物のワインかはわかりませんが樽の中で熟成させちゃってください


Related Posts:
「マリス博士の奇想天外な人生」
「アップルを創った怪物ーもうひとりの創業者,ウォズニアック自伝」
「成功術 時間の戦略」
「ご冗談でしょう、ファインマンさん(上・下)」

0 件のコメント:

コメントを投稿