評価:3.5
あぁわかるなぁ、というのがこの本を読んでもっとも感じたことだ
19才のオレと39才のユリ
そんなどこにでもいる主人公のどこにでもあるような恋愛
しかしそんな一つ一つのことにとても共感した
「人のセックスを笑うな」というタイトルには誤解があるかもしれない
しかし小説の中にそのまま出てくることはないし、文字通りのような小説でもない
ただ好きな人と一緒にいる時間、相手の一つ一つの仕草、くだらない冗談
そうした自分たちだけにしかわからない感情があるのはたしかだ
タイトルはそういう意味なのかなと感じる
この作品はケータイ小説のようでありながら、純文学のような作品だ
特に次の言葉はすごく好きだ
「明けましておめでとう」
オレが言うと、ユリは、はっとして、それから泣き出しそうな顔をして、言った。
「幸せってなんだか知ってる?」
「知らない」
オレが答えると、真面目な顔をしてユリは言う。
「こういうことだと思う」
ユリは泣き始めたみたいだ。涙を、オレは舐めた。彼女の気持ちはよくわかった。大事な人と抱き合って新しい年を迎えるということは、陳腐なようでいて、実は奇跡だ。
人の人生にはそれぞれ自分だけのストーリーがあって、自分にしかわからない感情というものがある
そうしたことを言ったりするのはとても難しいことだけれど、そうした心情をとてもうまく描いた作品だなぁと感じた
文芸賞の選考委員会の方に「思わず嫉妬したくなるほどの才能」と絶賛されたと書かれていたが、短くも切ない、いい小説でした
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