評価:4.7
書評サイト「松岡正剛の千夜千冊」でおなじみの知の巨人、松岡正剛の読書術だ
よくある読書術なんてのとは訳が違う
なんたって松岡正剛なのだから
目次
1章 多読・少読・広読・狭読
2章 多様性を育てていく
3章 読書の方法をさぐる
4章 読書することは編集すること
5章 自分に合った読書スタイル
6章 キーブックを選ぶ
7章 読書の未来
松岡正剛の読書術は一言でいえば「多様」だ
タイトルに「多読術」としているが、多読も少読も広読も狭読もなんでもいいと言っている
読書とは本来多様であるべきものだ
松岡正剛と言えば相当な読書量だが速読についても言及している
まずは、前にも言ったように速読術のノウハウ本なんてあまり頼りにしない方がいいと言うことです。
(略)
速読にとらわれるのがダメなんです。どんなテキストも一定の読み方では訳するというのは、読書の意義がない。それって早食い競争をするようなものですから。(笑)
実際著者は線を引きながら読書しているが僕はしていない。それはそれでいい
座って読むもよし、寝て読むもよし
良書も悪書もない
それが松岡正剛の「多読術」だ
書評サイト「千夜千冊」についても言及している
そこで、あえて縛りをかけることにした。一人の著者につき一冊だけというルールにしたのも、同じジャンルのもの、たとえば生物学関係の本を続けないとか、時代小説を続けないとかも、そのためだった。あとは、わざわざその本を「千夜千冊」に選んだのだから、批判をしたり文句を付けないと言うことですね。本にケチをつけるのは、実はかんたんです。でも、それはしないことにした。
正直書評を書いていて本に評価をつけるのは気が引ける
それをつけたとたん相対的な評価になってしまうからだ。そうしたものは本来必要ないのだが、自分がどれだけ突き動かされたかという基準でやはりつけてしまう
この本を読んでて思うのだが、著書は読書を要約したり批評したりするのではない
自分がこの本を読んでどう感じたか、どうなったのかという読書体験を語っている点がこれほど有名なサイトになった一つの要因だと思う
これに関しては小飼弾さんもブログで似たようなことを述べている 404 Blog Not Found 書評Blogの本当の売り物
P. 152
読書投資法(1) 本は著者との対話。対話しているつもりで読む。
これが、読書を体験するということです。私自身何度も繰り返し本blogで言っていることですが、読書は情報をダウンロードすることではないのです。むしろ脳内リンクしたりアンリンクしたりといった感じの、ウェブサイト構築に似ているのです。知的生産とは、脳という畑で作物を育てる行為で、読書はその畑を耕す行為。内容という「肥やし」はもちろん必要ですが、肥やしをまけば作物が育つかといったらそんなことはありません。それを耕してすきこまないと駄目なのです。
「晴耕雨読」といいますが、これは本当は「晴耕雨耕」なのです。耕している場所が違うだけで。
書を語るな、体験を語れ
以上を踏まえると、他の書評blogに対するアドバイスは上のとおりとなります。
もちろん体験を語るには、それに対応する「書」も自然と語ることになります。しかし、書評の読者が求めているのは、その本に何を書いてあるかではないのです。それらを語るのは、著者のblogであったり出版社の紹介ページであったりAmazonをはじめとするオンライン書店の該当ページの役割であってあなたの役割ではない。
あなたの役割は、それを読んだことによってあなたに何がおきたかを紹介することなのです。
最近の弾さんが読書体験なのか広告なのかという議論は置いといてこれには本書と通じるものはある
実際僕もこの点に気づいたのはつい最近だったのだが、しかしこれは書くとなると相当難しいことがわかる
なぜなら読んでいる側にもバックグラウンドがなければ他人が読んでくれるような読書体験は書けない
実は今まで個人的に真に読書体験を語ったと言えるのは「大人げない大人になれ!」であるが、これは僕のレビューの中ではかなりアクセスが多い
正直これだけではわからないが、そうしたことを物語っているのかとも感じた
話が少し脇道にそれたが、なんのために読書をするのか
それに対して「読書の楽しみ」としてこう表現している
一言で言えば、未知のパンドラの箱が開くということでしょうね。本はやっぱりパンドラの箱。読書によって、そのパンドラの箱が開く。そこに伏せられていたものが、自分の前に躍り出てくるということです。
(略)
無知から未知へ、それが読書の醍醐味です。
本というのは不思議なメディアだ
1千年前以上から現在の形をとってきている
おそらく人の人生は有限であるから、本の力を借りて人は長く生きようとしているのかもしれない
本の力を借りて有限の知から無限の知に解放しようとしているのかもしれないと思った
ところで、この本は丸善 丸の内店(東京駅)の松丸本舗にて買いました
初めて松丸本舗に足を運びましたが、世の中にはこんなにも多様な本があるのかと実感できる空間でした
いかに自分が狭い知的空間で生きているかと誰もが感じたはずです
東京駅に降りる機会があれば、ぜひ多様な読書を具現化した松丸本舗に足を運んでみることをおすすめします
きっと新たな出会いがあると思います
0 件のコメント:
コメントを投稿