2010年8月15日

「『希望の国のエクソダス』取材ノート」

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「『希望の国のエクソダス』取材ノート 村上龍

評価:4.2





大和証券主席研究員から始まり、為替ディーラー、経済学者、ジャーナリスト、文部省役人、ネットビジネス社長、果ては不良や中学生まで希望の国のエクソダスにおいてそれぞれ重要なパーツの取材の記録だ


まさにこうした取材一つ一つから希望の国のエクソダスという壮大な物語が形作られてきたというのがわかる


そして著者自身も言っているように非常に専門的な話も多く、そうした専門家の考えや体験を村上龍という媒体を通して話を聞けるというのはなかなかおもしろい体験だった


特に今まで話したこともないような人との対談というのはおもしろい

たとえば不良
普段どんなことをしてるのか、とかどんな規則があるのかなど

またディーラーというものがまさに麻雀やパチンコとなんら変わらないような仕事であるということも知った

元々株式投資で似たようなことをやっていたのでわからなくもないが、桁がものすごく大きいこと以外一緒なんだなと感じた



そうした新鮮な人々のなかでも特に僕にとって興味深かったのは、文部省政策課長である寺脇研氏との対談

著者自身文部省のイメージが変わったと書いてあったが、僕のイメージも変わった

そして話を聞いているうちに日本の将来を長いスパンで考えたとき一番大事なのは教育であり文部科学省なんではないかと感じた


特に従来の価値観が変わっているこの時代にいろいろな「リアル」な体験を積むことの重要性というのは全く同感だ


村上龍はこう述べている

雇用問題に関するセーフティネットって、たとえば敗者復活戦とか、職業再訓練であったりしますよね。けれど一番大事なセーフティネットというのは、「お金儲けだけが幸福じゃない」と言う文化風土であると思うんですよ。
そうすると来るべき競争社会には、最初からそこに参加しない子供だっていっぱいいるわけです。今、雇用問題はもっぱら経済金融の文脈で語られてるけど、本当は極めて文化的な問題なんです。だから文部省の役割は本当に大きい。


雇用はまさにテーマでもある「希望」や「幸福」に関わってくると思うが、その本質を「文化的な問題」と捉えるのは非常に興味深かった


これはそのまま僕の今後のテーマにもなりそうな予感もした

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